アイルランドもだんだんと春めいてまいりました。ただいまの気温は8℃。暖かいね。(洗脳)
気温のほどはさておき、こちらではすでにサマータイム(哲学)が始まり、7時前から陽が昇り、日の入りはなんと20時半。多くのアイリッシュが外へ飛び出し、せっせと光合成に勤しんでいる。
雨が降っていない日(晴れているとは言ってない)には、各パブが店の外にテラス席をこしらえて、店内も店外も多くの人々で賑わっている。やってることはアメ横や高円寺の高架下と同じなのだが、画がオシャレで悔しい。
長編のハンガリー旅行編を終えたので、少し日常編を挟みながら、余裕のあるときにダブリン編・コーク編の旅行日記をしたためようと思います。というわけで、今回は一部の読者?フォロワー?のみなさんから妙に人気のある、イタリアンボーイ(ベイビー)回だ!!
事前知識:ホームステイ先について
羊は語学学校のホームステイ制度を利用して、ブリティッシュマザー(幼少にアイルランドに引っ越してきたためほぼアイリッシュではあるが)の元でお世話になっている。家にはマザーの他に3人の学生が滞在可能になっていて、羊+学生2人がほぼ常に住んでいる状態だ。
学生の滞在期間は人それぞれなのだが、大体が1〜2週間のショートステイ。学生ビザできている人たちは1ヶ月ほどホームステイをして、他のシェアハウスを探すというパターンがほとんど。メシマズ羊は3ヶ月半の滞在なのだが、これだけ長期なのは珍しいパターン。
今はイタリアンボーイとフレンチガイがハウスメイトである。イタリアンボーイは2ヶ月間の滞在(現在1ヶ月と少し)なので、マザー・羊・ボーイ・と誰か1人、というフォーメーションで約2ヶ月間を駆け抜けていくぞ!
イタリアンボーイの基本情報
ローマ出身のシティボーイ。羊の第一印象は「彫刻みたいな髪型って実在するんだ…」。
引用元:ダビデ像 (ミケランジェロ) - Wikipedia
彫刻だからこんな感じの髪質の表現になるんかな〜と思っていたのだが、マジでこのまんまで畏れおののく羊。世界は広い…。
彼は大学卒業後の23歳。ヨーロッパでは大学卒業から就職までに準備期間を多少取ることが一般的らしい。卒業後に就職活動をしていたところ、気になっていた某企業の担当者から「英語力が低すぎるからウチには厳しい。もう少し英語を使えるようになってから来なさい。」と言われたらしく留学を決めのだとか。アイルランドにした理由は「田舎暮らし」。生まれも育ちもローマの彼は都会があまり好きではないらしく、田舎に来たかったとのこと。
日本は母国語だけでもなんとかなる内需と経済基盤があるから、就職のために留学をして英語力を磨く!という人はまだまだ少数派。しかし、ヨーロピアンにとって英語は、EU経済圏で生きていくために必須スキルに若干なりつつあるらしい。
質問コーナー
- なぜゴールウェイにしたのか?→「気づいたら決まっていた」
- なぜ今の語学学校にしたのか?→「気づいたら決まっていた」
- なぜホームステイにしたのか?→「気づいたら決まっていた」
う〜ん、不穏!
マザーと羊が感じた最初の違和感
彼が到着した日の夜、その週は1人学生が欠員していたので、3人で食卓を囲むことに。なんで「イギリスじゃなくてアイルランドにしたの〜?」みたいな話をしているときに、上述のように「田舎が良かったから」という返答があり、アイルランドVSイギリス問題は大体これで回避できるのだが、彼はそれだけでは留まらなかった。
伊「だってロンドンは家賃が月に€1,000とかするし有り得ないじゃん。アイルランドは家賃安いし、絶対得!」
羊「君が今住んでるところ、月€1,000超えてるで…。」
マザー「ロンドンはさておき、下手したらイギリスの片田舎の方が家賃安いまであるで。」
伊「なんですと!?」
なんと彼は自分にかかっている学費と生活費について、まるっきり把握していなかったのである…。(就職前だし払えとは言わんが。)
そして、マザーの家では、マザーが毎日美味し〜いごはんを作ってくれる代わりに、食器洗いやテーブル拭きなどの後片付けは学生たちが担うことになっている。食器洗い係・食器拭き&棚にしまう係・テーブルの上を綺麗にする係に分かれて作業開始…なのだが
伊「食器洗いしたことない。やり方わからん。」
羊「(イタリアには家庭科の授業とかないんか???)と、と、と、とりあえず拭くだけなら、簡単だし、なんとかなるんちゃう?洗いはおいおい覚えればいいし…。」
伊「わかった。」
マザー「ちょい待ち。それお手拭き用のタオル(ふわふわ)だぞ?食器拭き用はこっちな(すべすべ)。」
伊「見分けがつかん。何が違うんだ?」
マザー「いやいや、見た目も肌触りも全然違うやんけ!」
伊「なんでわざわざ分けるんだ?」
マザー「衛生面&食器を傷つけないためだぞ〜」
ママンボーイ
1週間後、新しくチェコ人の学生がやってきた。彼女は40近くということで、もちろんだが一通りの家事はこなせる大人だ。イタリアンボーイの洗いの残しを見つけたとき、チェコ人は笑顔で問うた。
チェコリパブリック「家でママの手伝いとかしたことないん?洗い物したことなかったって結構だぞ。」
火の玉どストレートぇ…
この時点でマザーと羊は、彼は相当お金持ちな家庭の育ちで、専業主婦のママを持ち、なんならお手伝いさんもいるみたいなローマの大豪邸で何不自由なく暮らしてきたおぼっちゃまに違いない!と2人で妄想しながら遊んていたのだが、ついにその答えが…明かされる…のか!?
伊「俺はママンボーイだから仕方がない。」
マザー「…ママンボーイとは?」
伊「お母さんにベッタリで、なんでもお母さんがやってくれた。(ドヤ)」
羊「(かっこ良く言い切ったけど…堂々と言うことではないのでは…??)」
その日から、彼が不在のときにマザーが使う呼称は「イタリアンベイビー」になった。
チェコ人の勢いがどうにも止まらない
チェコリパブリック「ママンボーイになった経緯を話してみろ。」
ベイビー「俺は母子家庭だったからだ。」
羊「?」
マザー「?」
チェコ「ほ〜ん?」
3人の頭にはそれぞれ疑問符が浮かぶ。母子家庭であることは、家事をやったことのない理由にはならないのでは…?羊の脳内ではアキヤマシンイチの幼少期(母子家庭のイメージ)がリフレインしていた。家族には色々な形があるメェねえ。
電子レンジ事変
ある日、昼食を取ろうとキッチンに入ると、何やら苦戦中のイタリアンボーイと出会して声をかけられた。
ベイビー「これの使い方がわからない。教えてくれ。」
羊「どれどれ…。」
キッチン周りの道具は、自国のものと使い方や仕様が異なるものが多く、初見ではパッと使えないこともよくある。洗濯機とかかな?と思って近づいたところ、彼の指さす方向にあったのは電子レンジ。
羊「え、これ?(確認は大事)」
ベイビー「うん。」
マザーの家の電子レンジはソーシンプル。電力(W)とタイマー(min)のダイヤルがそれぞれ1つずつあるだけ。W数は最大出力700Wで大体OKなので、ぶっちゃけタイマー側のダイヤルを右にちょっとひねるだけなのだが…。いやいや、ただ単にアナログ設定の電子レンジを見るのが初めてだったのかもしれん。23歳だしデジタル世代だろう。そうに違いない。
羊「この下のダイヤルが時間の設定になってるから、温めたいmin数だけ右に回せばいいんやで〜。」
ベイビー「わかった、ありがとう!(ガサゴソ)」
ーチン♪ー *食べ物を入れてから3秒
ベイビー「え、もうあったまったの?早っ」
羊「3秒で温まるわけないだろ????????」
そう、彼は知らなかったのだ。電子レンジの基本的な使い方を…。そのお椀いっぱいのおかずを何分温めればいいのかを…。3秒は流石に無理だろ。その器と量だと1分半くらいかかるよ、と丁寧に教えてあげた。
坊や…いったい!何を!教わってきたの??
この話をマザーにしたところ、マザーは「ベイビーに電子レンジなんて使えるわけないわよ」と一蹴。ええ…だって23歳だよ…。ちなみに、洗濯機は使わせるのが怖くてマザーが代わりに洗濯しているとのこと。ええ…だって23歳だよ…。
そしてマザーの口から飛び出した衝撃の言葉が…これだ…!
マザー「甘いわね、ベイビーはパン袋のジッパーすら一人で開けられないわよ。」
羊「パン袋の…ジッパー…?」
マザーは見た。キッチンで朝食にパンを食べようとしているベイビーを。しかし彼は袋をガサゴソするばかりで一向にパンをトースターに突っ込む様子がない。
ベイビー「袋が開かない。」
マザー「それ開封前だから、まず上の部分を切らないと。手でも切れるしハサミを使うならここね。」
ベイビー「おお!…あれ、まだ閉まってるけど、もっと下を切るの?」
マザー「いやいやいや、ジッパーで閉じてあるだけだから普通に引っ張れば開くって。ジッパーより下は絶対に切るなよ。」
ベイビー「本当だ!すげえ!!」
もちろんその後にジッパーが閉じられることはありませんでした、とさ。トホホ…
そんなベイビーにもできることはあるんです
コーヒーを淹れる
マザーはインスタント派なのでコーヒーは基本お湯に溶かすだけ。ベイビーはコーヒーにこだわるタイプらしく、挽いた豆と自分専用のキットを持参して毎朝ドリップコーヒーを入れている。お湯を沸かすケトルの使い方(ボタン押すだけ)は知らなかった。
パスタを作る
生粋のイタリア人ゆえかパスタを作ることができる。コンロの付け方は知らなかった(これは家庭によってかなり違うのでしゃーなし)
可愛い彼女を作る
モデルさんみたいな彼女がいる。本人曰く「今までたくさんの女の子と付き合ってきた」。彼女に何かアイルランドのプレゼントをと思い、宝石店で指輪を買おうとするほど恋人想い。店員さんにイタリアンサイズの”50号”を注文したらしく、「そんなサイズねーよ」とお断りされたらしい。
マザー「へー、指輪いいじゃない!お母さんにも何か買ったの?」
ベイビー「え、買う必要なくね?」
羊「ママンボーイとは…(哲学)」
そんなベイビーですが、ホームステイを通して少しずつ自分でできることが増えている模様。どんなことでも始めるのに遅すぎると言うことはない!彼の英語力を指摘した人事担当者は、間違いなく彼の人生を変えたと思う。
お父さんがダブリンに遊びにきたとき「男の顔つきになってきた。」と褒められたらしく、本人も自身の成長を喜んでいた。残り3週間のステイ生活も十二分に楽しんで行ってもらいたいメェね。すべての若人に幸あれ。
今週はまだ始まったばかり!みなさん、火曜日もご安全に!