魔女の宅急便のモブは言い放った。「私、このパイ嫌いなのよね」と。
"ニシンのパイ"だとか"うなぎゼリー"だとか、いわゆるイングランド料理はマズイと思っている日本人は少なくない。さらに現地人ですら若干認めている節があり、イギリスで一番美味しいのはフィッシュ&チップスだよ、と自虐する者がいたり、そのまたさらに、日本のフィッシュ&チップスの方が美味しい、と感動する者もいる。一方では、料理がマズイわけではなく味がないだけだよ、と肩をもっているのか貶しているのかわからないような、客観的な見解をもっている人もいる。(ちなみに、滞在経験のある人のほとんどはマズイor味がないと酷評する。)
もちろん、これらの問題はイングランドだけではなくて、ほぼ同じ気候の島国で、歴史上共通した文化が多い、スコットランドやアイルランドなどのケルト圏にも派生すると考えるのが自然だろう。だから、私メェがアイルランド(イングランドの真西だよ)に行くことを日本人に話すと、「ご飯大丈夫…?」と80%くらいの確率で尋ねられる。実は、私メェは、4年ほど前に旅行で1週間ほどアイルランドに滞在したことがあり、その際は食事で嫌な思いをしたことはなかった。そのため今回も心配はしていなかったのだが、今日クラスメイトとお互いの地元で好きな料理について話し合ったことをきっかけに、今一度アイルランド料理について考えてみようと思い、今日のブログは私メェがアイルランドで体験している食文化について紹介しようと思う。
まず、今まで食した料理リストを書き出してみる。
9/10(土)
夜:チキンのパン粉揚げ ベーコン入りクリームソース添え/タイ米のピラフ
9/11(日)
ブランチ:スクランブルエッグ/蒸し野菜/パン
夜:スモークドサーモンのグリル/フライドポテト/グリーンピース
9/12(月)
朝:パン バターとイチゴソースを添えて
昼:サンドイッチ *家の外で購入
夜:マトン(羊肉)のハンバーグ/フライドポテト/グリーンピース
9/13(火)
朝:シリアル(コーンフロストとほぼ同じ)
昼:ギネスシチュー/ギネス *家の外で飲食
夜:なし *学校行事ありのため断った
9/14(水)
朝:パン バターとイチゴソースを添えて
昼:特になし
夜:サーモンソテー/フライドポテト/蒸し野菜
※毎晩食後には、アイスとフルーツポンチが出る
※平日は朝・夜、土日は3食全てがホームステイ料金に含まれる
※甘味は日本と同じようなクオリティ
再掲も含まれるが、(左)チキンのパン粉焼き、(右)ギネスシチュー
私メェの評価としては…ホームステイ先で出てくる料理はどれも美味しいと思う。タイ米だけは微妙だが、食べれないというほどではなかった。スモークドサーモンのグリルは特に大ヒットだった。日本では、焼!といえば塩鮭だから、スモークドサーモンは生食メインでカテゴライズされていて、蒸すはあるかもしれないが、あまり焼く機会はないのではないかと思う。実際私メェも初めての経験だったが、まぁ、美味しくない訳ないよね、という味がした。チキンもマトンのハンバーグも、あまり食べたことのない料理だったが美味しくいただけた。野菜にグリンピースの出現率が多いのは、同じくステイ中のイタリア人が野菜嫌いで、唯一グリンピースだけは食べられることが土曜日の食後に発覚したためであり、グリンピース好きの国という訳では全くない。が、個人的には蒸し野菜の方が好みなので、グリンピースは小出しで願いたい。
朝は、初めに用意の仕方を教わり、その後は自分で勝手に作ってヨシ、という方針だ。パンでもシリアルでも、ほしければフルーツでも、自分の好きなように用意して好きな量だけ食べることができる。また、朝昼夜問わず、お茶(紅茶、グリーンティー、レモングリーンティ!?など自由に)とクッキーはセルフサービスでいただき放題である。
概ね満足ではあるが、やはり日本人としては濃い味のものが恋しくなる、という感想だろうか。朝も晩も、お茶か水などのソフトドリンクでいただくので気になるほどではないが、酒と合わせるにはパンチが薄く、ただただ腹が膨れるだけで酒が進むどころか止まりそうな味付けと量(というか芋芋芋)だ。同じ西洋なら間違いなくドイツ、イタリア、スペインに軍配が上がるだろう。味付けがシンプルすぎるというのは(イングランドほどではないものの)どうやらケルト圏共通の文化のようだ。アイルランドの場合、自給率が高くて元の素材がいいので、ある程度そのままでも食べられる、というのも大きいだろう。ちなみに、某ニシンのパイや某うなぎゼリーのような、見た目がそもそもアレ(検索注意)という料理には、まだアイルランドでは出会したことがない。
日本の出汁による味の深みが恋しくなるなあ…と思いながら帰宅して家のドアを開くと、私メェがお土産として持参した箱(お湯を注ぐだけでいろんな汁になる最中)を片手にもっているマザーが目の前の廊下にいて、同じくステイ中のイタリア人の自室が廊下の右にあるのだが、そのドアが閉まろうとしていたところだった。イタリア人は私メェに気づいた様子で、ドアを開いて「おかえり。」と挨拶をしてくれた後、手のひらにもっていた最中を私に見せ、「お土産、僕ももらったよ、ありがとう。」と言った。続けてマザーが「せっかくだから彼にもあげたのよ、このクッキー。私も楽しみ。ありがとね。」と言った。
いやいやいやいや、ちょっと待て。それクッキーじゃないです。
慌てて私メェがクッキーと誤解されているその物体について説明すると、二人とも大爆笑で「ちょうど帰ってきてくれてよかった、危なかった!」と文字通り腹を抱えて笑っていた。いや、本当にあと数分遅かったら何も知らないイタリア人が味噌をダイレクトに頬張っていたかと思うと、私メェは血の気の引く思いだった。イタリア人が日本を嫌いにならなくてよかったと心から思う。(彼は食にとても厳しい。)ちなみにこの日、学校で " to POUR a cup of water " (コップ1杯分の水を「注ぐ」)というフレーズを習っていたので早速活用させていただいた。 " It's a soup. You should pour hot water to this! "
と言ったような事件もありつつ、穏やかに日々の食生活を送っている。もし日本人の皆に伝えずにはいられないようなショッキングな料理に出会したら、その時はまたブログにまとめたいと思う。皆さん、木曜日もご安全に!